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早朝3時半。
ザンビアで始まる初めての朝。
早すぎて気分が悪い。
肌寒く、そして、肌寒い。

朝ご飯を考えている暇はない。
迎えのタクシーが来ている。
バスデポまで連れていってもらい、予約した大型バスに乗り込む。
シートは心地好く、マラウイのバスより豪華だ、と思い込めばそう思えなくもない。
その程度の差だ。
乗客もマラウイに比べてマナーが良い、と思い込めばそう思えなくもない。
その程度の差だ。

人が考え、そして行動する時、偏見がたいてい付いてまわる。
ザンビアに自分はいるのだ、という偏見がバスをより快適にさせる。

偏見というものは恐ろしい。
他人の偏見を捨てられない以上、都合の悪い偏見を持たれないように努力するしかない。
偏見は持ってはいけない、そう言われて偏見をあっさり手放した人間を僕は見たことがない。
そして、僕もその一翼を担っている。

バスは5時ジャストに出発した。
予告通りに出発するザンビアのバス。
マラウイのバス会社に棲むビッグフィッシュ達にザンビア研修を義務付けたい。
バスを時間指定にしたらそれに合わせて客も進化する、それを彼らは知らない。
会社は客を信頼せず、客は会社を信用していない。
ここでもマラウイとザンビアの差が出る。
もうザンビアの背中は小さい。

このカメはウサギが休んでいる間に地道に差を詰めることはしない。
ウサギが休んでいる間に、木の下でチャッティングしている。
チャッティングなら救いようがあるが、それはもしかしたら独り言の可能性さえある。

ザンビアのバスにはトイレ休憩がある。
素晴らしい。
大したサービスはないが、サービスエリア的な場所に停まるのだ。

マラウイでは、誰かしらがトイレに行きたいと申告するやいなや、ぞろぞろと人が這い出し、草むらの中に思い々の場所を見つけ、一斉に余分なものを外へ出す。
見れたものではない。
地獄絵図とはこういうことを表現するためにある言葉なのだろう。

ただ、ザンビアの景色は褒められたものではない。
他人のものは良く見えるが、その偏見を持ってしても、ザンビアの景色は完全にしょうもなかった。
田舎の景色はマラウイと同じで萱葺のものが多く、人口密度がマラウイより低い分、よりアフリカらしい景色だった。
これも、はじめて見る人にとってはとても感動的なものなんだろう、と赴任当初の自分を振り返る。

途中で簡単なパンとコーラを買う。
味も簡単だった。

マラウイでもよく見かける光景だが、大勢の人が同じ野菜や同じ商品を持ち、同じような値段で売る。
これでは、他の人との差はほとんどつかない。
ついたとしても、それは必然ではなく、偶然だと思う。
ここに、少しでも何か工夫、例えば
・味を変えてみる(チップスなど)
・量を減らして、値段を下げてみる
・人とは違う野菜で目をひく
・売る場所を変えてみる
といったアクションをしてみればいいのに、と思う。
もちろん何でもかんでも、人と違ったことをすればいいってものでもない。
ある程度考えて、成功しそうなものを試せばいいと思う。
でも、彼に失敗したとしても、大きな損害になるような規模の話ではないはずだ。

バラエティが極端に少ないマラウイの食に見られるように、ここでもマラウイの保守的な文化が影響しているように思われる。


相変わらず、だいたい7時間だよ、という情報だけを持っている僕はしきりに時計を確認する。
・・・
そして、およそ7時間後。
都市らしいものが出現する。

ザンビアに来るまで、散々マラウイ隊員から、
「ルサカ(ザンビア首都)はリロングウェ(マラウイ首都)なんかと全然違って発展してるよ」
と言われてきただけに、僕の頭の中ではかなりルサカは発展していたのだが、実際行ってみれば、大したことはなく、リロングウェに毛が生えて少し大きくなったくらいの感じだった。
やはりここでも偏見という悪魔に翻弄される。

バスデポからザンビアの同期に会うため、ドミトリーに向かう。
タクシーはザンビア初心者らしくきっちりとボラれる。

久しぶりに同期と再会。
仲はそこそこ良かったはずだが、一年という時間のせいで、絡み方を忘れてしまった。
こういう時に誰かに場を丸投げするのが、24年間とってきた方法だが、ここでも1人旅というのが重くのしかかる。
大した解決策が見出せないまま、成り行きでザンビア隊員のBBQに参加する。

知り合いが1人、そしてその知り合いとの距離感さえも手探り状態、さらに僕以外の全員が既に大の仲良し集団の中、BBQという史上最悪の状況。
だが、僕にはどうしようもなかった。

ファンタジスタならこんな不利な状況でも溶け込んでいくのだろうが、僕にはそんなものはない。

サッカーではホーム&アウェイというのがよく議論される。
総得点が同じだった場合、アウェイゴールは2点にカウントされるように、アウェイで実力を発揮することは通常より難しいとみなされている。
僕はホーム&アウェイでそれほど出せる力が変わるのか疑問に思っていたが、今日はっきりした。
人は通常、アウェイでは思うようなパフォーマンスはできないのだ。

ボール支配率2%程度のBBQを何とか切り抜け、ドミに戻り夕食。

幸い、そこには同期ではないが、理数科教師の方がおり、活動や共通の鬼顧問の話で意外に盛り上がる。
盛り上がったかは知らないが、僕の中ではBBQよりは盛り上がった。

マラウイの生徒は数学が大の苦手だが、その傾向はザンビアでも同じだという。
お金への執着を見ていると数字に強いような印象も与えるが、実際はそうではない。
位置や空間を把握する能力が低いことも数学が伸びない原因の一つになっている。
日本人が理数科目に強いのは知られているが、人種によって得意・不得意が出てくるのは脳か何かに秘密があるんだろうか。
マラウイの子どもも道路が複雑に入り組んだ都市部に住めば、そんな能力が育つんじゃないだろうか。
京都の“碁盤の目”に代表されるように、日本の町は昔から比較的規則正しく作られてきた気がする。
もちろん、何の確証もないけれど、文化が少なからず影響を与えてきたとすれば、考えるだけでおもしろい。


シャワーを浴び、逃げるようにベッドに入り、明日に備える。
こういう日が一番疲れる。
改めて、僕は人づきあいが苦手なのだな、と感じる。

明日は家族と再会する。
僕は1人旅からついに解放される。

こうして、完全アウェイのザンビア遠征初日を終えた。

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