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2010.05.28 奥歯


現地語(チェワ語)で「オクバ」とは「泥棒」です。

研修中、宿泊する寮のセキュリティが甘いのは十分わかっていたけれど、まさか蚊帳の中に入れていたポーチを寝ている間に盗られるとは。

僕のケアレスは確かに少なからずある。
犯人がまさに盗って逃げる瞬間に目を覚まし、犯人のシルエットを目撃したにも関わらず寝ぼけて何もできなかったのは一生の後悔だ。ついていた部屋の電気が逆光で顔がわからなかった。

ただ、状況から判断して、犯人は同じ寮に泊まっていた現地教師の一人である可能性がとても高い。

もしそうだとしたら、教師失格である前に人間失格だ。

毎週日曜に教会へ行って神様へお祈りすればそれで許されるんだろうか。


こういうことがあるからと現金は少なめ、貴重品もなるべく抑えたが、デジカメを盗られたのは痛かった。
夜中2時頃の犯行だった。
朝6時くらいに同じキャンパスの中で、犯人がいらないと判断した僕のパスポートのコピーや手帳、名刺、家の鍵などが無残にも道路に散乱していた。

この研修では僕は得たものより失ったものの方が大きい。

ただ、体は無事だったこと、一緒に必死になって探してくれた他の教師たちや研修を中断して任地へ帰るなどというわがままを許可してくれたスタッフの優しさに触れられたのは不幸中の幸いだった。

ちなみに同じ部屋で寝ていた僕の同僚の携帯、隣の部屋でも一つ携帯が盗まれている。


今も犯人がニヤけながらこっそり逃げていく映像が頭から離れない。



みなさん、奥歯にはくれぐれも気をつけてくださいね。

彼らは人間の形をした悪魔なんだから。

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2010.05.22 焦り


現地での生活が長くなるにつれ、協力隊が必ずといっていいほど感じる焦り。

それは日本社会への復帰。

こちらの生活に適応するのにもそれなりの苦労がある。
語学での苦労はもちろん、文化の違い、人間関係、仕事などなど。
でもある程度慣れてくれば、日本語のアドバンテージがあっても、日本社会の方が明らかにしんどい気がしてくる。

アフリカで生活するんだ、そう言うと、人はたいてい「すごいね」っていうけど、そんなにすごくはないのです。
むしろ日本社会で働くあなたたちに言いたい。「すごいね」

ネットで久しぶりに僕が一応籍を置く大学院のサイトにいってみたところ、僕の研究室の紹介ホームページになんと準教授の名前がないではないか!?あれ?いずれそうなるだろうとは思っていたけど、まさかもういなくなっていたとは…。いやはやおそろしい。こちらで僕がのんびりやってるうちに日本ではめまぐるしく状況は変わっているのだ。怖くなっていろんな研究室HP巡りの旅に出てみると…やっぱり。あの人もこの人も。あぁ僕は取り残されている。僕が帰る頃には、無言の「あなた誰ですか?」が毎日のように僕に降り注ぐんだろう。ドクターに進学する、もしくは進学した知り合いのみなさん、帰国した浦島太郎を是非お昼ご飯に誘ってください、お願いします。

残す任期はあと1年4カ月ちょっと。長いよ。じゃあもうアフリカ生活悔いはないですか?と聞かれれば、まだ帰れるほど何もしていないし充実感も満足感も達成感もないけど、この時期で既に大学院への復帰をおそれ始めている自分。8月の一時帰国の時に復帰準備のための準備をしなきゃ僕は本当に取り残されてしまう気がする。

まぁ、あがいても任期は変わらないし、こちらでしかできないことをまずは優先して、復帰準備も怠らないようにしようと思います。


もっと勉強しなきゃ。
もっともっと勉強しなきゃ。
もっともっともっと勉強しなきゃ。

誰か催眠術かけて。


先週から僕の学校は2学期の学期末テストに入りました。


配布されるはずのテストがまだ印刷されていなかったり、まだテストを提出していない先生がいたりで、タイムテーブルが直前になってどんどん変わっていくという日本ではありえないようなことが毎日のように起こっています。


僕はというと、一人ではこんな悲劇を変えることはできず、仕方なく与えられた仕事をこなしています。

日本で生まれ育った僕にはどうすればこんなにグダグダにことが進むのか、なぜこんな簡単なことでさえ大の大人が揃いも揃って管理できないのかが理解できない。

お金がなくても頭を使えば(しかもそんなに頭を使わなくても)改善できるところは山ほどある。

僕にはマラウイの先生たちのほとんど、いや、マラウイの大人たちのほとんどが学生の延長に見える。
日本の高校生を何人か選んで同じことをさせればもっとうまくやるだろう。

有り得ないことを書きだすとキリがない。

僕はこの手のグダグダにはもううんざりだ。

でもマラウイ人が、これでいいんだよ、というなら、これでいいんだと思う。
望んでいないのに無理やり先進国のシステム(そんな大そうなものでもないが)を持ち込む理由も見当たらない。

先週に終わった僕の担当の試験は採点も終わり、僕は来週から始まる研修に向けて体調を整えるのみです。


来週からの研修というのは、SMASSE INSETといって、つまり現地の理数教科の質を上げるために理数科の先生全部集めて研修しようよっていうものです。

研修期間は1週間。
選ばれたいくつかの学校に理数科教師が集まり、泊まり込みで研修を受けます。

噂によるとシャワーは水のみ。
食事は朝昼晩すべて高カロリーな現地食。
部屋は現地教師と共同。

僕ら協力隊にとっては研修よりも明らかに生活が過酷なこの企画。
現地の先生にとっては研修よりも豪華な食事が魅力なこの企画。

僕にはこの研修が本当に効果があるものなのかがいまだに疑問だ。

まぁ行ってみないとわからないですけどね。

それが終われば1週間の休暇。

任地を離れて気分転換する予定です。


「長いので体力に自信がある方のみお読みください」


ゾンバを8時に出るバスの席を確保するために朝は早い。
僕は移動日の朝はどんな状況でも早く起きられるようにプログラムされている。
ウガンダ勢はやはり紅茶によって起きる。

朝6時過ぎに家を出る。

ゾンバに着き、席を確保した後は、僕はいつもの店にパンを買いに行く。
僕はいろんな店に行こうと思わない。比べようと思わない。比べてこっちの方が安いよー!!という人がいるが、僕には比べる時間や労力が面倒で仕方がない。それを短縮するためにお金を払っていると思えばいい。同じところに足しげく通う。狭く深くだ。新しい店を知ることは嬉しいが、友達に連れて行ってもらう時くらいで十分だ。僕にはこの類の探検にも興味がない。おかげでよく行く店の人とはすぐに顔なじみになれる。

ウガンダ勢は朝からまともに食べていない。なぜだ?新陳代謝が止まっているのだろうか。それとも僕の食い意地が張っているだけか。食べない2人に挟まれ、僕の食欲も抑えつけられる。

リウォンデでマンダシを買う。
サクサクでおいしい。
安定感がある。

バスは順調に進む。
1時過ぎには首都に到着。
荷物が重いのでタクシーでバスデポからドミへ移動。

僕には明日すべきことがある。
そのためにはJICA事務所と銀行に行く必要がある。

その前に腹ごしらえしなくてはいけない。
僕が前からウガンダ勢に勧めていたマラウイ版“牛丼”を食べに行く。
吉野家の牛丼とはかなり違う。
しかし、安い(約150円)、早い(約30秒)、うまい(肉が柔らかい!)と走攻守3拍子揃っている。
マラウイのイチローだ。
しかもボリュームもある。つまりファンサービスも怠らないということだ。
イチローは元気してるだろうか。
偉そうだが、別に面識はない。

牛丼はいつもより脂っこかった。イチローでもミスはする。人間だもの。
だが、温かいファンはイチローのエラーも一興と考える。

僕は銀行で大金を下ろす。
さらにJICA事務所で、金庫に預けておいたもっと高額のお金を受け取る。
一方、うにゃは僕に金を借りっぱなしだったので最低限のドルをクワチャに換金する。

マラウイクワチャと日本の円はケタがほとんど一緒だが、クワチャは最高紙幣が500だから同じ額でも手が震えるくらいの札束になってしまう。

ポーチに鍵をかけ、ドミへ戻る。

これが明日には手元から消える。

今日の晩御飯はドミ近くの僕のお勧めのレストランへ。
運んでくるのは遅いが、うまい。
僕は決まってセサミチキンを食べる。
いつもより脂っこい。
今日は全国的に脂っこい日のようだ。

なんだかんだ言って今週は高カロリーが続いた。
やせなきゃと意気込み筋トレを始めるが、HPは回復していなかった。
シャワーさえ浴びずに僕は眠りについた。

その日から続く腰痛に僕は今でも悩まされている。
(翌日)

スーパーで買ったしょうもないパン2つとリコフィ(vol.5参照)で頭は動き始める。

今日は一日中うにゃとデートだ。

またしても僕は銀行に向かい、大金をおろす。
昨日集めたお金を持ってしてもまだ足りないのだ。

そして準備が整う。

旅行会社に向かう。
英語の発音がマラウイ人ではないマラウイ人が対応してくれる。仕事ができるオーラが出ている。予約しておいたチケットの情報を確かめる。席は窓側を希望する。

僕の頭はもう機内を想像している。
“What would you like to drink?”
“Coffee, please.”
あぁ、これはリコフィではなくコーヒーだ。
時計を調節する。
時間の進みが早くなる。
気持ちのギアも上がっていくようだ。
機内ではどんな曲を聴こうか。
空港に着いたらおにぎりとお茶を買おう。

すべて確認してからポーチを開ける。分厚い封筒を取り出す。保護者のように離れたソファーでくつろいでいるうにゃに目配せをする。300000クワチャ(約153000円)にもなる札束を取り出す。札束と一緒に僕の魂も持っていかれるような感覚になる。このお金は一応自分が自由に使えるお金だが、自分にそれを使うだけの価値があるのか疑問に思えてくる。自分は目の前の札束より貫禄がない。僕とこの札束を並べて、どっちを選びますか?と街で質問すればコールド負けだろう。機械が札束を数える。支払いが完了する。チケットが手渡される。

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Lilongwe(Malawi)- Johannesburg(South Africa)
Johannesburg - Hong Kong
Hong Kong - Tokyo Narita
帰りはこの逆だ。時期にしては思ったより安かった。

大事にポーチにしまい、うにゃとのデートの続きを楽しむ。

カフェに寄る。
カフェで流れる時間を楽しむ。

Oさんと合流する。
最後にやり残したことがあるのだ。

マラウイの現地食である“シマ”を食べに行く。
僕はシマとビーフを注文。ウガンダ勢はシマとチキンを注文。
手で食べる。
僕はあまり頻繁には食べないが、なぜか手で食べるのに苦はない。
うまい、また来よう。
ウガンダ勢もシマの味には満足した様子。

僕とうにゃはデートの続きをする。

またしてもカフェに寄る。

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カフェラテなるものを注文し、流れる時間を楽しむ。

帰りにうにゃはお土産を買う。
僕は明日の朝のパンを買う。首都ではここのパンがうまいと発見してから贔屓にしている。

晩御飯は予算の関係で自炊することに決定。

チャーハンとラーメン。
そうと決まれば、次は買出しだ。
ベーコンが異常に高かったので、ミンチを使うことにする。その他もろもろを購入し、ドミに帰る。
料理上手のOさんがメインで作る。

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僕は手伝っているように見えるだけだ。大した仕事はしていない。
おそろいのTシャツ。
ガーナに赴任した同期がくれたものだ。彼女はこれが流行ってると言ったが、その噂を僕は聞いたことがない。うにゃはこれを使い勝手がいいと愛用しているが、一方の僕はこの機会にスーツケースから取り出した。でもマラウイに持ってきてるだけでもそれなりに価値があると判断したのだろう。ワールドカップに連れていく23人のようなものだ。試合に出られるかはわからないが、メンバーに選ばれるのと選ばれないのでは全然違う。そういえば、続々と各国のメンバーが発表されている。前評判ではスペイン、ブラジル、イングランドと言われている。確かにメンバーを見てもこの3つは頭一つ抜けているだろう。あとはチームとしての完成度だ。結果、サッカーの質ともにダントツで優勝したユーロ2008当時のメンバーにさらに有望な若手が加わったスペインの強さは相変わらずだろう。

料理はうまかった。どこがいいという批評はできないが、うまかったから僕にはそれでいい。Oさん、ありがとう。

うにゃとの一週間を思う。
充実した一週間だったと改めて思う。
いろいろあったが、一瞬で過ぎた。

筋トレを始めるが、またしても僕は途中で寝てしまう。
腰痛が治っていない。

(うにゃ最終日)

僕の朝は早い。
が、ウガンダ勢は朝に弱い。
昨日買ったおいしいパンとリコフィで頭は動き始める。

なんだかんだしているうちに時間は過ぎていく。

荷物をまとめ、タクシーを呼ぶ。

ドミの玄関で別れる。
1年5カ月後の再会を約束する。

7か月がすぐだったように、1年5カ月もすぐに経つだろう。

僕はすでに東京での再会が待ち遠しい。

今週から僕の学校はテスト期間に入る。
僕は日常に戻る。
しかしうにゃの非日常は続く。

うにゃはいったんケニア経由でウガンダに戻った後、ルワンダへ行く。
訓練所でともに頑張った同期に会いに行くのだ。
ウガンダからルワンダは許可されている。
しかしマラウイからルワンダやウガンダは許可されていない。
意味がわからない。

まぁいい。この一週間で僕はへとへとだが、うにゃは見かけ以上に体力がある。僕は見かけに輪をかけて体力がない。おかげで高校サッカー部での3年間は本当にきつかった。

タクシーを見送る。
バイバイうにゃ、お互いの場所でまた頑張ろう。

おしまい。

今日はネットの調子が良く、休日でもあり、体力も回復してきたので、2ついっぺんに更新しました。

「ホントに長いので体力に自信があり、ヒマな人のみお読みください」

朝からバタバタしている。
目玉焼きサンドを作り、学校に行き、アシスタントに原稿を渡し、家に帰ってチャートの準備をした。
イラストがささっと書けるのは訓練所で鍛えたおかげだろう。

準備を終え、授業の合間を使ってリハーサルをする。
うん、悪くない。
あとはここに観客が入り、実験が成功するのを願うのみだ。

諸事情で開始時間が2時間早まる。
アフリカに予想外は付き物だ。
“Are you ready?”と聞く張本人が一番Not readyだ。

ぞろぞろと会場に生徒たちが入ってくる。
嬉しいのは僕が教えている1年生以外も来てくれていることだ。

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少なく見積もっても150人はいただろう。
全校生徒の半分以上が来たことになる。

12時30分、開演。

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司会の僕が適当にしゃべる。

1つ目の実験は“Heat Balloon”
これはうにゃが担当する。
ビニール袋、エナメル線、ティッシュ、エタノール(orろうそく)、マッチを使って簡単な熱気球を作り、浮かせてみる。
予備実験ではうにゃ発案の軽量化が功を奏し、うまく上昇していった。
ビニール袋が燃えないことがポイントだ。
1発目だけにスタートダッシュを決めたいところ。

・・・
頑張れ、うにゃ
・・・
ビニール袋に熱せられた空気がたまっていく、、、
・・・
・・・浮いた!!
観客も一気に盛り上がり、拍手が起こる。
うにゃの根拠のない自信は見事な結果を示して見せた。
その後は原理の説明。
理解しているかは疑問だが、ノリで「わかった!」と答える生徒たち。

せっかく撮ったうにゃの勇姿はデジカメの気まぐれにより失われた。
前にもこんなことがあった。大学の卒業旅行で行った沖縄。2泊3日の最終日の昼に全データが消滅という衝撃の嫌がらせを僕のデジカメは平気でやってのける。
デジカメだけにとどまらない。必死の思いで151匹集めたって252匹集めたって、勉強そっちのけでゲームボーイに興じる現代の若者を菅原道真が見逃すはずもなく、僕を待っていたのはデータの消滅という報いだった。
いつか僕の記憶も消されるのだろうか。
だからこそデータはバックアップするに限る。新しい情報が自然と入ってくる以上、古いものはそれに追いやられていく。例え好きな人であっても更新されなければ時間とともに色は失われる。
ということで、うにゃゴメン。

幸いOさんが動画で撮ってくれていたのでとりあえずはセーフ。

2つ目の実験からは生徒の番だ。“Ethanol Explosion”。
うにゃがコーチだ。

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空き缶に少量のエタノールをいれ、紙コップをかぶせる。
空き缶の下の方にあけておいた小さな穴にろうそくの火を近づけて、充満したエタノールの蒸気を爆発させ紙コップを飛ばす。
練習を重ねるうちに、エタノールをやや多めにすると紙コップが勢いよく飛ぶことがわかった。

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オールマイティタイプのパトリックが先陣を切り説明・デモンストレーションをする。
僕がマラウイの女の子だったらこいつに惚れるだろう。
会場がうるさいのが気になるが、アシスタント達はめげずに続ける。
実験に関する注意事項など細かいところもよく説明できていた。
コーチがいいからだろうか。
うにゃも満足そうだ。
残りの3人も無事にデモンストレーションを終えた。
会場から1人選んでさせてみるくだりもうまくいき、会場はいっそう盛り上がる。
原理の説明はコーチが担当。
この実験はわかりやすいだろう、エタノールの危険性を知ることが目的だ。

3つ目は“Invisible String”僕のチームだ。浮沈子をうまく英訳できなかった。
悪ガキのリタがデモンストレーションを担当する。

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堂々とやってのける。観客を使ってのパフォーマンスもうまく運んだ。
とりあえずコーチとしては一安心。

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原理は僕が説明。
生徒は相変わらずうるさいが、真剣な顔で聴いているやつのために大声を出す。
上級生でも少し難しい内容だったかもしれないが、大事なのは今この場で理解することじゃない。

あっという間に最後の実験“Thunder Shock”
紙コップとアルミホイルで簡単なコンデンサーを作る。そこに塩化ビニルパイプとセーターで起こした静電気をためていく。ある程度たまったら、何人かで手をつなぎ、一気に感電するというもの。
湿度が低く、ホコリも少なく、さらに手際よくしなければ全員がビビっ!!とくるのは難しい。

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1Bのクラス代表でもあるアイサークが使う道具の紹介、実験の手順などをスムーズに説明して見せる。
どうでもいいが、アイサークは字がきれいだ。
さて、肝心の実験。
順調にチャージできているように見える。
1人会場から選び円の中に入ってもらう。
・・・
少しモタついている。
・・・
これはいかん。
モタついている。
・・・
3,2,1…
どうやら感電したのは会場からピックアップした生徒だけのようだ。
会場全体が一瞬気まずい空気になる。

“Thunder Shock”と名付けたが、ピカチュウの電気ショックの方がまだ威力があるだろう。
でもこの世界にポケットモンスターはいない。
もっとおそろしいモンスターがいる。
だめだ、話がそれている、舵を戻そう。

アシスタント達は実験がこうなる可能性が十分あることを練習からちゃんと学んでいる。
動揺はしていない。
幸い、感電した一人がまるでサクラのようにその場を盛り上げてくれたので僕らは救われた。

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最後はOさんの原理の説明。
チャートに書かれたたくさんのビジュアルエイドは理科実験には不可欠だ。
わかったか?と聞くととりあえずは“Yes, Sir!!”というマラウイの生徒たち。

すべてのプログラムが終了し、最後は僕がやはり、適当にしゃべる。


・・・
・・・
終わった。

この達成感。

1週間の疲れが一気に押し寄せる。

異常な疲労感が逆に気持ち良い。

アシスタント12人を会場に残す。
頑張りを称える。彼らは充実したいい顔をしている。
頭の中にアテネオリンピック体操男子団体、最後の技を決めて誇らしげに決める富田(だったよね?)が浮かぶ。“栄光の架け橋”が流れる。

うにゃが持ってきたいいカメラで記念写真を撮る。

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これは忘れられない一枚になるだろう。

サイエンスショーを終えた僕らには「山の上でディナー」というご褒美が待っている。

少し休憩してタウンに行き、タクシーをつかまえ、ゾンバプラト-を上る。景色が最高だ。
ゾンバは旧首都だが山から見ると街があるかもわからない。20分ほどして山の上のホテルに到着。ここで夕食。値段は高いが、場所と雰囲気にお金を払っているのだ。
アフリカの大地を見下ろし、忙しく過ぎていったこの一週間を思う。我ながらよくやったと思う。

洗練された空間の中で、冷えたビールを飲み、チキンを食べ、アップルパイを食べる。
JICAスタッフや何人かの隊員は味に文句をつけるが、僕には文句をつけるところが見当たらない。

帰りは夜景が見られる。今日は幸い停電がないようだ。光の量は日本と比べ物にならないほど小さい。写真だけ見れば函館山や六甲山から見る夜景の方が数百倍いいだろう。しかし、アフリカの夜景は星がそのまま地面に落ちてきたような感覚に陥る。四角形に収まるようなスケールではない。
この景色もまた、基本的には女性と見たいものだ。
とはいえウガンダ勢もこのプランには満足してくれたようで、それが何より嬉しい。

明日は早朝任地を出て首都にあがる。

僕の肩の荷が下りる。
気持ちが軽くなり、夜更かししたくなるが、たまった疲労がそれを許さない。
僕は充実感に包まれて眠りにつく。

こちらに来てから一度は挑戦してみたかったサイエンスショー。それをこの早い段階で達成できたのは何よりこのウガンダの理数科教師2人のおかげだ。一人では厳しかっただろう。任国外“旅行”なのに文句一つ言わずハードワークに徹してくれた彼らに心からありがとうを言いたい。
もちろん協力してくれた生徒たちにも同じことが言える。彼らにとってもこれが何かのモチベーションになってくれたら今回のプログラムは成功だったといえるだろう。


体を休めなきゃ。
HPはもう、赤色で表示されている。

うにゃがウガンダで買ったという寝袋は僕のより優れているようだ。
紅茶を入れる。
うにゃは起きるしかなくなる。

今日の授業のトピックはN極・S極だ。
まずは棒磁石を鉄粉につけ、端っこの磁力が強いことを見つける。
どこに強くひきつけられるか予想させてみると、大半が“真ん中”と答えたのはおもしろい。
次にN極・S極の性質を調べる。
方位磁針で北の方向をチェックし、棒磁石が本当に北を向くか確かめる。
棒磁石を細い糸で吊るし、それを机と机の間に渡した箒にくくりつける。
予備実験なしで挑んだ。
いつの間にか僕もうにゃと同じ“根拠のない自信”を持ち合わせていたようだ。
ゴンザレス(訓練所の先生)が見たら説教だろう。
しばらく待つと、無事にN極は北を向いた。
地球の磁力は健在だ。

訓練所では磁力をテーマに80分の模擬授業をした。
ルワンダに赴任した同期と夜な夜な作業したのを思い出す。
無心でカラークリップを切っていた彼は元気にしているだろうか。
3次元で表現してみせたあの磁力線はゴンザレスも満足そうだった。
せっきー、今度は広尾でエアーキャッチボールやろうね。

今日はサイエンスショー前日。

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他のチームはしゃべりの担当も決まり、本番を待つのみだ。

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僕のチームはというと、まだパフォーマンスの運びがはっきり決まっていない。
でもデモンストレーション自体はほぼ完成されている。
明日念のため原稿を渡すからと言って前日の練習は終了。

今日の晩御飯はうにゃ作のホワイトシチュー。
僕が作ったよりもずっとうまかった。
なぜかはわからないが、うまかったからよしとしよう。
料理に対する向上心は僕にはない。

明日僕は授業がない。午前中をフルに準備に使えるというわけだ。
それを考えると寝ていいという気がしてくる。
僕は追い込まれないと仕事ができない。
夏休みの宿題が予定通り進むのははじめの一週間が限界だ。
大学受験だって2年分のZ会をラスト2カ月にするはめになった。
そういえばあの頃の記憶はほとんどない。
あの頃の僕の頭は思い出を記録することさえ止めてしまっていた。
あれから下降の一途を辿っている。
競争のないユルい場所にいるからだろう。

サイエンスショーは明日に迫っている。
うにゃに焦っている様子はない。むしろ眠そうだ。


「長いので体力に自信のある方のみお読みください」

前日ほどの寒さはなく、すがすがしい朝だ。
2人はまだ寝ている。
紅茶をいれよう。そうすれば彼らは起きるのだ。
朝は残ったカレーを焼いた食パンと合わせて食べる。
7時20分頃、学校に向かう。
僕の家は学校に隣接していて歩いて1分で行ける。

僕たちは存在するだけで注目を集める。
まるで宇宙人が来たくらいの注目が集まる。
日本にいる時でさえたまに無になりたいと願う僕にとって、これは何より耐え難いものだ。
僕はいつだって影に隠れていたい。1番を目指すが2番でありたいと願う。そういうずるい人間だ。つくづく次男でよかったと思う。

アセンブリー(朝礼)は本来月曜だが、昨日(月曜)が祝日だったので今日(火曜)にするみたいだ。

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予想に反して、校長からウガンダ勢の紹介を促される。
僕が簡単にうにゃ達を紹介し、木曜のサイエンスショーを公式にアナウンスする。
これで全校生徒がサイエンスショーの存在を知ったことになる。ハードルがさらに上がった。
うにゃ達が続いて自己紹介する。発音しにくい日本の名前は、それだけで笑いがとれる。
特にうにゃの本名はウケた。

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僕の今日の授業のトピックは“Magnetism(磁性)”の導入。
磁石にくっつく物質とそうでない物質を調べるというアクティビティがメインだ。
原料がわかっている日本の硬貨(1円、5円、10円)も使ってみる。
磁石にくっつく物質は鉄を含んでいるのを見つけた後、マラウイの硬貨(1,5,10クワチャ)はどうか?という実験もする。
見かけはゴールドとシルバーだが、ばっちり磁石にくっつくあたりが、平和一色・紛争ゼロにも関わらず堂々と最貧国ワースト10入りを果たしてみせるマラウイだ。


昨日の夜の予備実験でわかったことだが、ウガンダは最近になって硬貨に鉄を入れはじめたようだ。思わぬところからウガンダの経済を案じてみる。

残りの時間はカードゲーム。簡単な公式や知識の暗記、そして彼らの名前を覚えることが目的だ。2コマ連続の講義は彼らの集中力が持たない。だから火曜日はカードゲームをすることにしている。

授業を終えウガンダ勢の評価をいただく。
生徒のコントロールが今後の課題だ。

ティータイムに出るコーヒーと食パン数切れで一息つく。
学校で感じる一番幸せなひとときだ。
やっぱり幸せのハードルはさがった。
到着当初は「これがコーヒー!?」という味のリコフィ(こちらでメジャーなインスタントコーヒー)だったが、今では本当のコーヒーの味を忘れてしまった。

学校が終わり、アシスタントとともに練習を始める。
“I want to join your club.”
と申し出てきた3人を新たにメンバーとして加え、1チーム4人で再始動。
いつの間に俺はクラブを結成していたのだろうか。
そんな大袈裟なものを作った覚えはどこにもない。
と日本語ならツッこめるが、英語では会話の選択肢さえも急に少なくなる。

慣れない英語。確かに、生活には何の支障もない。しかし、言葉の壁は大きい。一番重要なのはその言葉に込めたニュアンスだ。母語でも一苦労するのに、英語となると完全に汲み取るのはほぼ不可能と言っていい。僕はこちらに来てそれを強く感じ、日本で仕事がしたいと思うようになった。正しくは、日本語が使える環境で、ということだが。

まずは、昨日見せた実験の原理を説明する。
僕の担当は“浮沈子”チーム。
密度、圧力が絡む実験だ。
詳しく書き出すとキリがないので知らない方はネットで検索していただきたい。
1年生はまだ習っていない範囲だけに本質的には理解していない様子。
でも今はそれでいい。

僕だって小さい頃地元の大学祭で、空気砲とペットボトルロケットを見たが、原理など全く分からなかったし、だいたいからしてどうでもよかった。でもその映像自体は鮮明に覚えている。そして今では原理を説明できる(空気砲は正直怪しい)。
その時見た実験のインパクトは当時の僕にはとても大きかった。
それで十分だと思う。

この実験のポイントは水が満たされたペットボトルに入った浮き沈みする重りと糸をひくような手の動きをぴったり合わせることだ。
それを何回も練習させる。
彼らもコツがわかってきたようだ。
得意げな顔をしている。
まるで自分が考え出したような顔をしている。
競うように僕に見せつける。
とてもいい顔をしている。

僕のチームには1人先生からもマークされている悪ガキ・リタがいる。
リタが熱心に練習しているのを見て胸が熱くなる。

高校3年の学園祭を思い出す。
“共に頑張る”過程で恋は生まれやすい。夏の終わりに共に頑張った仲間とファイヤーを囲んでサザンの「真夏の果実」を歌って何も感じないやつはいない。

でもここはマラウイであり、立場も違う。彼ら生徒たちに恋が起こっても僕には興味がない。サイエンスショーが成功するかどうかで頭がいっぱいだ。

とはいえ、ウガンダ勢がもしも女性だったら恋の一つも生まれたかもしれないと、真っ黒に日焼けしたうにゃを見てため息をつく。
笑顔がまぶしい。

他のチームも順調に進んでいるようだ。
日本の生徒と違って圧倒的にマラウイの生徒が優れているのは度胸だ。
母語ではない英語でのデモンストレーション、しかも大勢の観客の前ですることを全くためらわない。
彼らなら成功する、何となくそんな気にさせてくれる。

形にはなってきたが、当日の段取りや原理の説明に使うチャートの準備などまだ全く手をつけていない。
これが本番2日前。
心配性の僕と“まぁ何とかなるよ”のうにゃ。
根拠のない自信はどこから来るんだと思いながら真っ黒に日焼けしたうにゃを見て何だか力が抜けていく。

この日は同行のOさんは同期の理数科教師の授業を見るために別の町へ。
僕とうにゃはタウンのピザ屋さんで夕食をとった。
始めて行ったレストランだったが、わりとおいしかった。

帰りのミニバスもやはり魚に襲われることはなかった。

今日こそは仕事を進めようと意気込むが、ベッドに寝転んで仕事がはかどるわけもなく、いつもより早く就寝。

訓練所を思い出す。
弱い意志ではベッドの誘惑に逆らえない。

明日は物理化学2コマ。
そして迫りくる本番。

僕の心配性はアフリカに来ても治らない。
どこの病院へ行けば治してもらえるんだろう。
またしても僕の頭は意味のないことに使われる。


「長いので体力に自信のある方のみお読みください」

住んでいる僕でさえ言葉を失うような寒さで目が覚める。
昨日のケープが夢のようだ。
ウガンダ勢はまだ眠っている、というより寒さで布団から出られないでいる。
朝にはやはり弱い2人。訓練所ではうにゃより僕の方が朝には弱かった。
温かい紅茶を入れると彼らは起きた。
遊んでいるつもりはないが、光に寄ってくる虫のようだ。

サイエンスショーといっても今回は僕らだけがデモンストレーションするのではない。
生徒にもさせるのだ。
アシスタントとしてあらかじめ僕の教えている1年生から9人を選んでおいた。
月曜日の朝9時に来いと伝えてある。
5人来れば上出来だろう。

でもその前に僕らは実験道具を買出しに行かなくてはならない。タウンに行って戻ってくることを考えれば僕らが遅刻だ。隣に住んでいるアシスタントの一人、ヤミカニ君にそのことを伝えておく。

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ヤミカニ君は英語は達者だが、理数科目はさっぱり。
でもとても親切でいつもよく手伝ってくれる好青年だ。

タウンでPETボトル、ビニール袋、アルミホイル、紙コップなどを購入。
彼らが独力で作るには経済的に少し厳しいが、なるべく現地で調達できるようにというのを前提として実験を選んだ。

帰ってきて昼ご飯にマンダシを食べていると、ノックの音が聞こえる。
ヤミカニくんだ。

ホールに行ってみると、元々選んでいたアシスタントのうち6人と選ばれていないのに来ちゃったやつが3人いる。
アシスタントの1人、パトリックがまじめな顔で僕を諭す。

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「Sir, is it 9 o’clock?」
「いいえ、11時30分です、すみません。」
タウンで買ってきたビスケットとコーラを与える。
コーラは高いが、空き缶を実験で使うのだ。

どうでもいいが500mlのコーラは大学時代から体が受け付けなくなった。
それと同時に小さい缶コーヒーに魅力を感じ始めた。
子どもの頃、大人がなぜあんな少量しか入っていない缶コーヒーを好んで飲むかが何より不思議だったが、今ではそれが痛いほどわかる。

ホールに実験器具を運び、まずはアシスタント達にどういう実験をするかを紹介し、やってみせる。僕らでさえ段取りが決まっていない中での初練習。
見切り発車もいいところだ。

今回彼らにしてもらうのは3種類の実験。
・紙コップ飛ばし(エタノールの爆発)
・浮沈子(水圧・密度の変化)
・100人おどし(静電気による感電)

ちょうど9人なので3人ずつ3チームに分けた。
僕ら日本人3人がそれぞれのチームのコーチとして就く。

今日のところはこれにて終了。
正直練習とは程遠いものだが、生徒たちは楽しんでいるようで、本番に向けて少し光が差してきた。

先週から学校の掲示板に堂々と“SCIENCE SHOW”と貼り紙をしていただけに、やはり成功させたい。

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ホームでは勝ち点を落とすわけにはいかないのだ。
ホームでは失点を最小限に抑えて最低でも引き分けに持ち込むのが鉄則だ。
だが、バルセロナ相手にホームで2失点は厳しかった。

帰った僕らは段取りを練る。
晩御飯はカレー。
日本のルーはただでさえうまいのに、うにゃの同行者Oさんがさらにうまくする。
料理ができる男はかっこいい。
女が魅力を感じるのも当然だろう。
でも僕は別のフィールドで頑張る。

“うまい”か“うまくない”かくらいの判断しかできない僕に料理の上達は見込めない。
ただ、僕と同じ程度の舌しか持っていないくせに料理について語るやつには寒気がする。そういうやつに限って伊勢海老とザリガニを区別できなかったりする。僕はそこに対する自信のなさを認めている。僕は間違うだろう。それでもいい。ザリガニがうまいと思えばいい。
またそんなしょうもないことを考えながら明日の授業のイメージトレーニングをする。
いや、できていたかはわからない。

明日は学校がある。
物理化学4コマ。
うにゃが僕の授業を見るのは訓練所以来だ。
未だに形になっていないサイエンスショーと授業を見られるプレッシャーは少しずつ大きくなってくる。
せっかくのうにゃとの再会を心から楽しめないでいる自分。
でもこれはチャンスなんだ。
そう言い聞かせて眠りにつく。


「長いので体力に自信のある方のみお読みください」

朝の肌寒い空気で目が覚める。
二人はまだ眠っている。どうやら彼らは朝に弱いようだ。
シャワーを浴びてすっきりした後は、穏やかな湖を見ながら物思いに耽る、フリをする。
考え事をするほどまだ頭は働いていない。
自分たちがケープにいられるのがあと数時間しかないことを確認し、悲しくなる。

ウガンダ勢もシャワーを浴び、荷物をまとめる。

先輩との待ち合わせのティールームに向かう。
宿と民家、お土産屋さんが並ぶ様はアフリカ版三条通りだ。
三条通りを知りたい方は奈良に来てもらえばわかる。

マラウイでは、地元の人がティーと軽いスナック(この店ではスコーンと呼ばれる味ほぼゼロのパン)を安く食べられるティールームなるものがある。

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小さい部屋に8人ものアズング(白人、僕らのこと)が入り、マスターは動揺を隠せない。
ミルクティーのスモールカップとスコーン2切れを注文。
2つ合わせて45クワチャ(約30円)。

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マスターと同じように僕らも、ヨーグルト並みの粘性を持ったコンデンスミルクに動揺を隠せない。
朝から血圧がグンっとあがる。
それもまたいいだろうと朝の肌寒さで少し冷えた体に温かいミルクティーが沁み渡っていく。


支払いは自己申告制。
明らかに計算できなさそうなマスターのためにきちんと計算課程を説明する。普段こんなに客が来ないのだろう。予想外の外国人バブルにマスターの頬が緩む。
そして名言が生まれる。
「Ndalama Party(お金祭り)!」
お金を見ると人は本性を現す。そしてマラウイ人は特にわかりやすい。でもマスターはいい感じの人だった。


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社会見学みたく、スコーンを焼くかまどを見せてもらう。
とりあえず興味を示すフリをして写真など撮ってみるが、実は僕にはどうでもよかった。
僕はいろんな事に興味が湧かないのだ。大学くらいから自覚し始めた。

そしてケープを離れる時がくる。
特に名残惜しくはない。また来るのだから。

ミニバスを乗り過ごした僕らに残された脱出手段は貸し切りのマトーラしかなかった。
今日は日曜日、他に帰る客も見当たらない。
要求されたのは5000クワチャ(約3000円)、粘った末に4000クワチャ(約2500円)。
予想外の出費にテンションが下がるが、アフリカに予想外は付き物だ。
予定通りにいくほうが驚く。

モンキーベイからマンゴチという町までの移動もマトーラ。
僕の肌は少しずつアフリカらしくなっていく。
うにゃは大して変わっていない。
荷台に乗せられた人間たち。
頭の中でドナドナが再生される。
僕らはいくらで売り飛ばされるんだろう。
50000クワチャくらいだろうか。
もう少し高く売ってほしいな。
それにしても荷台の上で受ける風は半端ではない。
ヤワなカツラなら150%バレるだろう、それならいっそ坊主にした方がマシだな。
またしてもそんなしょうもないことを考えながら運ばれていく。

マンゴチから僕の任地に一番近い町・ゾンバまではミニバスを使う。
ほぼ空っぽのミニバスだったから出発まで待たなきゃいけない。
マンダシを買う。
マンゴチのマンダシはうまかった。
リウォンデといい勝負だ。
でもリウォンデが僅差で勝っている。
外側のサクサク度合いが少し違う。
アウェーゴールの差くらいだ。
疲れているせいか、出発してからは車内で爆睡。

ゾンバに着いたのは昼の2時過ぎだっただろうか。
ミニバス乗り場の面倒くさい連中との非生産的な絡みを消化した後は僕の行きつけのレストランへ。
しかし顔なじみのウェイターがいない。その代わり仕事のできないやつがオーダーをとりにきた。
彼は笑っている。なぜかは全くわからないが、満面の笑みだ。
でもこっちは仕事のできなさに、どちらかというと笑えない。
笑顔だけが取り柄の彼だが、その笑顔を持ってしても仕事のできなさを全くカバーリングできていない。でも仮に彼が無愛想だったら今すぐにでも職を失うだろう。そう考えると、生きていくために笑顔は欠かせないのだな、と感心してしまう。
笑顔は地球を救う。どこかで聞いたようなフレーズだ。あのテレビ番組はいつからか見なくなった。
笑顔を大切にしよう。

そこに僕のマラウイの同期がうにゃに会うために合流する。
翌日が祝日ということで、3時間もかけてゾンバまで足を運んでくれた。

笑顔くんは笑い続けている。
ここまで笑っていられたら顔の筋肉もたいそう立派なんだろう。
オーナーから言われているのか知らないが、やたらと新しいデザートを勧めてくる。
食事も済んでいないのにデザートは早い。
軽く流して食事を楽しむ。

“同期は今!?”について盛り上がる。
食べ終わったくらいに新しいデザートが気になってくる。
悔しいが注文することに。
せっかくだから笑顔くんに注文してあげたかったが、運さえ持ち合わせていない彼はタイミングを逃し、別の人に注文。
運は人生の重要なファクターだ。
少し経ってから笑顔くんが嬉しそうにやってくる。自分の手柄のつもりだろうが、君じゃなかったらもう少し早く注文していたよ。デザートはおいしかった。

朝のコンデンスミルクといい、このデザートといい、少しずつ確実に僕は太っていく。
でもこの一週間は贅沢しないわけにはいかない。後で取り戻せばいい。
照準は3カ月後の日本に合わせている。

同期に別れを告げ、ようやく僕の任地へ向かう。
ゾンバからミニバスで30分。
どうやら僕が数カ月苦しめられていた魚便は季節限定のアトラクションだったようだ。
5月に入ってから魚にバスジャックされたことはない。
それだけで僕は幸せな気分になれる。
マラウイに来てから幸せのハードルは大きく下がった。

ミニバスを降り、2分ほど歩いて僕の家に到着。
気候は劇的に変わる。
日本で言うなら、昨日は沖縄、今日は東北地方だ。
寒さのおかげでマラリアになる確率は低い。
ハマダラ蚊だって、こんな寒いところに住みたくはなかろう。

タウンで買ったパンを食べた後は、寝袋に入って就寝。

明日は祝日だが、すべきことはたくさんある。
木曜日に控えたサイエンスショーの初練習、明後日に控えたウガンダ勢による授業参観のイメトレ。
ホームのプレッシャーを背負ったまま僕は浅い眠りについた。


「長いので体力に自信のある方のみお読みください」


昨日は11時半くらいに寝たというのに5時くらいに目が覚める。
遠足や旅行に行く日に限ってテンションが上がり、無駄に早く起きたがる子どもだった僕は未だにその性質を引きずっている。
僕は昔から大して変っていない。
ウガンダ勢はまだ眠っている。
疲れが残っているのだろう。まだ時間はある。起こすのも気が引ける。

たまたま同じ日にケープマクレアに行く先輩が5人もいた。
僕としてはケープに行くのは今回が初めてだったから、これはありがたい偶然。

6時30分のバスに乗るつもりだったが、アフリカのノリを使って6時30分に出発。
歩いてバス乗り場まで30分はかかる。

日本であればよほどの事がない限り、乗れる確率はほぼ0%だ。
しかしここはアフリカ。
しかもここはマラウイ。
確率は指数関数的に上昇する。

経験値の高い先輩達は僕らよりも遅く出発。
そして案の定、乗れた。
蓋を開けてみれば先輩と同じバス。

マラウイの長距離バスは席が埋まっても乗客を詰め込む。
一応遅れた僕らは何時間も立つことが決定。

バスは8時に出発。
日本ならクレームの嵐で会社は信用を失い大打撃だろう。
しかし、ここはマラウイ。
彼らバス会社に失うものは何もない。

うにゃが言う。
「景色がアフリカっぽいね。」
いや、うにゃもアフリカに住んでるよね。
と言いたいところだが、やはりマラウイはウガンダとは違うのだろう。

そして、日本人がテレビで見るアフリカもまた、ひどく脚色された歪んだ映像なのだ。それは自信を持って言える。だから僕らが帰国後いくら写真や映像を持って帰って見せたって現実はそのまま伝わらない。本人が直接ここに来て生活してみて初めてわかることは多い。
まじめな話はおいとこう。旅をレポートするには膨大な文字が必要になる。

ろくに朝も食べないまま出発したので途中の町でマンダシ(揚げパンみたいなやつ)とサモサ(ピロシキのアフリカ版?)を食べる。町によって味が少しずつ違うから食べ比べるのがおもしろい。

延々と続く同じ景色にうんざりする。日本の高速道路で防音壁に囲まれていろんな車種を見比べる方がよほど僕にとっては楽しい。

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最後尾に座っているアズング(外国人)がうるさい。朝っぱらから酒を飲んでいる。
マラウイ人はアジア人にチャンチュン!と揶揄するが、欧米人には何も言えない。奴隷文化の遺伝子が本能的に残っているんだろうか。
それはいいとしてとにかくうるさい。絡まれた僕と先輩が愛想笑いで酔っ払いの話を聞いてやる。
悲しいかな、彼らはピースコーだった。
援助関係ならピースコーを知らない人はいないだろう。日本でいう青年海外協力隊がアメリカではPeace Corps(ピースコー)だ。同業者がこうやって現地で威張り散らすと僕らへの視線も冷たくなる。でも、それを注意できなかった僕らもまた欧米人に対する本能的な劣等感を持っているんだろうか。まぁアルコールが大量に入った人間に注意しても意味がないのは今までの人生で経験済みだから何もしなかったのは正解ともいえる。

昼過ぎにはケープの近くの町、モンキーベイに到着。
暑い。暑すぎる。
アフリカとは思えない寒い任地で暮らしている僕にとって、ここは砂漠と大して変わらない。
だが、砂漠にしては店が多い。

先輩たちのおかげで旅は数倍楽しい。
バス停のチップス屋さんで軽く食べ、ケープまでの「マトーラ」を探す。

「マトーラ」、それはトラックの荷台だ。マラウイでは立派な移動手段。走っている時は風が気持ち良いが、基本的に直射日光を浴び続けるので暑い。


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先輩の交渉により、わりと安く乗れることに。僕らが乗ってからガソリンを入れたり、友達を迎えに道を引き返したりで無駄に時間が過ぎていくが、ここはマラウイ、気にしない。
ウガンダでは隊員のマトーラの利用は禁止されているらしく、ウガンダ勢には楽しんでもらえた様子。僕も普段は乗らないので、けっこう楽しんだ。

30分ほどしてついにマラウイ湖が姿を現す。

世界遺産・ケープマクレアに到着。

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きれいすぎる。
マラウイにこんなところがあったとは…!
来客をもてなすつもりが僕のテンションが一番上がってしまっていた。

先輩達とは別に僕らは宿を予約していたので、夕食を一緒にする約束をして先にチェックイン。

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荷物を部屋に下ろした後はビーチで湖を眺めながら物思いに耽る。
マラウイに来てからの7カ月間を思う。
早かったがいろいろあった。
本当につらかった時期もあった。
なんとか乗り切って今ここにいる自分を褒めてやる。
ご褒美にマウントレーニアのエスプレッソとミスドのフレンチクルーラーを買ってやりたいが、ここにはそんなしゃれたものは存在しない。
ミスドはいつアフリカに進出するのだろう。
南アフリカにあったりして。
いや、イギリスでさえ見かけなかったからさすがにそれはないだろう。
・・・。
そして、近いうちにまた来ることを心に決める。

一週間ここにいてもいい。
気になる人と来ればかなりの確率で恋に落ちるだろう。
心が浄化されるようだ。
気持ちも口元も自然と緩む。

うにゃ達も満足してくれているようだ。
それもまた、とても嬉しい。

しかし、自分たちに残された時間があと半日程度しかないことを考え、上がりきったテンションのやりばに困る。
一日が48時間だったらいいのにと一瞬思うが、やっぱりそれは長すぎると軽率な自分の考えに恥ずかしくなる。
それにしても、あと4日も残している先輩たちの笑顔が憎い。

夕食はピザなどを食べた。夕焼けもきれいに見えていた。まるで別世界だ。

明日の朝も一緒に地元のティールームで食べることを先輩と約束し、僕ら3人は宿に戻った。

こうしてマラウイが誇る観光地・ケープマクレアの魅力を目の当たりにした一日が終わる。

夜は涼しく過ごしやすかった。

マラウイの観光地で今こうして夜を越そうとしている一人の奈良県民。
俺はここで何をしているんだろう。
ここで生活していると自分を他人のように感じることがある。
マラウイ人に囲まれて職員室にいる日本人を見て、それが自分であることに気づいて、不思議に感じることがある。
そんなことを考えながら眠りにつく。

尊敬の意味を込めて僕は彼を「うにゃ」と呼ぶ。
ブログでも変わらず「うにゃ」と呼ぶことにする。
その由来は話すと長くなるから省略する。
去年の6月、東京の広尾で受けた技術補完研修から一緒に頑張ってきた仲だ。
実はうちの実家にも来たことがある。


うにゃがマラウイに来たのは4月30日金曜日。
約7か月前、近鉄奈良駅の改札の前で驚くほどあっさり別れて以来の再会。

JICA事務所近くのレストランで待ち合わせ。
久しぶりに会ったからか、うにゃに同行者(ウガンダの理数科教師の方)がいるからかはわからないが会話がどうもぎこちない。
そしてうにゃはまず僕の肌の白さに驚く。
僕自身、アフリカで生活しておきながら日本の若者と大して変わらないその肌の白さに少しの後ろめたさはあるものの、教室隊員のくせにやたら焼けているうにゃにツッこんでやりたいところだが、どちらかというと僕の白さの方がおかしいからそこは抑えよう。

事務所での簡単なブリーフィングを終えてこの日はお互い長距離移動で疲れているのでドミへ向かう。

とその前にカフェに寄る。
「二人ともお疲れでしょう?」
と言いながらカフェを勧める僕が一番カフェに寄りたいのだ。

今日はもう店閉めるわよオーラ全開のおばちゃんに頼みこみアイスコーヒーを注文。味は大したことないが、アフリカではコーヒーがアイスで飲めること自体珍しいので、味などもはやどうでもいい。
だいたい僕にとって、カフェのコーヒーがおいしいのではない。カフェでコーヒーを飲んでいる時間がおいしいのだ。

ウガンダから到着したお二人にまずはマラウイの第一印象を聞く。
そしてやはり出た名言。
マラウイの首都リロングウェが誇るカムズ空港に降り立った旅行者が必ず口にする言葉

「間違ったかと思った。」

首都の空港と聞いて乗ってきたはずなのに高度が下がっても一向に都市らしいものが見えない。それどころかポツポツと集落が散らばっているだけ。滑走路に着いても、日本のホームセンター並みの建物が申し訳なさそうに建っている。チケットに記されている「リロングウェ空港」という文字は見当たらず、旅行者が知るはずのない「カムズ空港」という名前が刻まれている。間違ったと思うのも無理はない。むしろ「これぞマラウイ!」と胸を張って飛行機から降りられるのはマラウイである程度生活したマラウイ隊員のみだろう。

同じアフリカで生活している彼らが「穏やか」と表現するマラウイの首都リロングウェ。
そしてそのリロングウェを大都市と感じるようになってしまった自分。
もう僕は奈良に帰っても涙を流す準備ができているということだ。
テンションが上がって地元でデジカメを取り出すかもしれない。
友達に見られるかもしれないから気をつけよう。
エスカレーターにうまく足を乗せられるだろうか。
かれこれ7カ月も僕はエスカレーターに乗っていない。
そんなしょうもないことを考えながら、二人の話に耳を傾ける。
いや、傾けていたのかは疑問だ。
とにかく、同じアフリカでも違うことは多いようだ。
それを肌で感じられるという点で、この「任国外旅行」が持つ意味は大きいと思う。
とあっさりまとめてみる。
噂には聞いていたがやはりマラウイはアフリカの中でも下の方なのか…。
まぁ、そこで2年間生活するのも良い経験だろうと自分を励まし、ドミへ移動。

荷物をとりあえず下ろし、隊員御用達の中華レストランへ。
マラウイに来た当初はおいしいおいしいと口に運ぶ先輩を見て、舌の調子がおかしいのかな?と疑問に思ったものだが、今では僕もそれと同じ舌を知らぬ間に手に入れた。
お二人もわりと気に入った様子。つまり彼らも同じ舌を持っているようだ。

ドミから帰り、少し休んだ後は移動の疲れを癒すため就寝。

明日は早朝ドミを出発し、マラウイ最大の観光地であり世界遺産、ケープマクレア(マラウイ湖のビーチ)へ向かう。

はじめは僕の任地で一週間も過ごす予定だったが、それはさすがに悪いだろうということで、急遽計画されたこのプラン。マラウイに一週間来ること自体、物好きの感は否めないが、さらに僕の任地で一週間となると受け入れる僕も路頭に迷う。

ケープマクレアでは数日間まったりするのが一般的だが、もう一つの僕たちの大きな計画「サイエンスショー」の準備のためなるべく早く僕の任地に向かわなければならず今回は1泊2日という強行スケジュール。
しかも僕は学期中で授業も普通にあるのだ。


しかし、先輩の「ケープに1泊だけ?そりゃ足りないよ。」の意味を翌日僕は身をもって知ることになる。


久しぶりの再会だったが、同期以上の存在である「うにゃ」に7カ月のギャップは大したものではなかった。
うにゃと過ごしたこの一週間の経験は2年という任期の中で見ても重要な意味をもつだろう。それくらい充実した一週間だった。


一日ずつその詳細を書いていこうと思う。

2010.05.09 祭りのあと


ウガンダから来てくれた友人は今日マラウイを発ちました。

この一週間の様子は残ってる仕事が終わって体力が回復したら詳しく報告しようと思います。

とにかくこの一週間は濃い、そして有意義な日々でした。


この一週間で太ったから、まずはやせなきゃ…。



ウガンダから来た二人の話から推測すると、マラウイの首都はやはり首都のレベルには達していないようだ。

でも、彼らはマラウイに来てよかったと言ってくれているので僕はそれだけで満足です。



明日はマラウイ一の観光地、マラウイ湖の湖畔でまったりしてきます。


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